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最高裁判所第三小法廷 昭和59年(あ)1029号 決定 1984年11月22日

本籍・住居

横浜市中区本牧三之谷九五番地

会社役員

馬場力

昭和五年三月二八日生

右の者に対する常習賭博、所得税法違反被告事件について、昭和五九年七月九日東京高等裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から上告の申立があったので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人春田昭の上告趣意は、違憲(三八条一、三項違反)をいうが、原審において何ら主張、判断を経ていない事項に関する主張であるから、適法な上告理由にあたらない。

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 安岡滿彦 裁判官 伊藤正己 裁判官 木戸口久治 裁判官 長島敦)

○ 昭和五九年(あ)第一〇二九号

上告趣意書

常習賭博、所得税法違反 馬場力

右被告人に対する頭書被告事件につき、昭和五九年七月九日東京高等裁判所が言い渡した判決に対し弁護人より上告の申立をしたが、その趣意は次のとおりであります。

昭和五九年九月一〇日

右弁護人 弁護士 春田昭

最高裁判所第三小法廷 御中

第一、二審判決は次の理由により憲法第三八条第一項、同法第三項に違反する判断をしたものであり、右判決は破棄せられるが相当と思料する。

理由

第一 第一、二審判決は、被告人の捜査官に対する各供述調書は信用性があるものとし、本件各事実を認定している。

第二 しかしながら、被告人の捜査官に対する各供述調書は、捜査官の保護観察付の執行猶予になるという利益誘導により作成されたものであり、これは憲法第三八条第一項の何人も自己の不利益な供述は強要されないという条項に違反している。

第三 且つ又本件各事実を認定せる証拠は、被告人の捜査官に対する各供述調書がほとんどで、他にこれを補強する証拠はなく、このことは憲法第三八条第三項の何人も不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には有罪とされ又は刑罰を科せられないという条項に違反している。

第四 よって原審の判決は被告人の自己の不利益な供述を捜査官が利益誘導をなしたものであり、右事実は憲法第三八条第一項に違反し、又右被告人の不利益な供述を唯一の証拠としている原審は、憲法第三八条第三項に違反しており、他に何等の証拠のない本件各事実は破棄せられるが相当と思料するものである

以上

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